双極性感情障害(躁うつ病)の新しい治療的アプローチをご紹介いたします。
専門的な知見も含んでいるため、分かりにくい部分があることはご容赦ください。
これは気分障害のエピソードの回数と再発までの期間に関する各種研究報告をプロットしたものです。エピソード回数が増えるほど、再発までの期間が短縮するという結果が、今までの様々な臨床研究で示されています。
このグラフは、横軸に各種の神経認知機能検査、縦軸に各患者群と健常者群の神経認知能力の治療による改善度(エフェクトサイズ)をプロットしたものです。
縦軸のエフェクトサイズが大きくなるほど、認知機能が低下していることを示しています。
青色の線グラフが躁病エピソード1回、緑色の線グラフが2回、赤色の線グラフが3回以上の患者群です。
3回以上群の方が1回群よりも各認知機能スコアにおいて有意にエフェクトサイズが大きかった、すなわち躁病エピソードの再発を繰り返す群は、より認知機能低下が認められていた結果となっています。
躁病エピソードでの入院、休職を余儀なくされると、認知機能低下だけではなく、社会的機能が大きく損なわれ、社会復帰が難しくなります。
躁病エピソードの反動で、うつ転することはしばしば見られますが、ここで抗うつ治療を見誤ると躁うつを繰り返して急速交代型になりかねません。
つまり、双極性感情障害の治療において、うつ状態の治療が重要なのは当然のことですが、躁病エピソードの再発、再燃を抑えることが、病状の進行を抑え、予後を良好なものにするという意味で、さらに重要であると考えられています。
2020年9月、エビリファイLAIが「双極Ⅰ型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」の効能追加の承認を取得しました。
この持続性抗精神病注射剤は、月1回の筋肉注射により、導入52週後において95.5%が躁病エピソードの再発、再燃が見られず、再発率を有意に低下させたという国際共同試験の結果があります(Calabrese, J.R. et al.: Int. J. Bipolar Disord., 6(14), 2018)。
当院では躁病エピソードがある方、急速交代型の病状を呈している方に対して、積極的にエビリファイLAI筋注による治療を推奨しています。ご興味のある方は是非お問い合わせ下さい。